高温環境で使用されるデバイスやパワー半導体など、発熱しやすい機器の基板として、セラミック基板を用いる場合があります。
セラミック基板は熱伝導性・絶縁性・耐環境性に優れる反面、FR-4や銅基板とは異なる特性を持つため、マシン実装(SMT)には特有の課題があります。
本記事では、セラミック基板を選ぶ理由と、マシン実装における課題、そしてそれを解決するための対策を分かりやすく解説します。
セラミック基板とは ~特長と用いるメリット~
電子機器の高性能化や小型化に取り組む際、発熱や信頼性の問題は避けて通れません。
基板の放熱性能や強度が製品寿命を左右するため、基板の熱問題への対策としてセラミック基板を採用することがあります。
セラミック基板の特長として、「熱膨張係数(CTE)の適合性」「優れた熱伝導性」「高い絶縁性と信頼」などが挙げられます。
熱膨張係数(CTE)の適合性
部品と基板の膨張率の差が大きいとリフロー加熱の際に、はんだ接合部や部品表面に割れや剥がれが起こります。
セラミックは、LEDチップなどの半導体素子に近い熱膨張特性を持ち、部品と基板の歪みを小さくできます。
これにより、特に割れやすいUVC LEDでも実装の信頼性を高められます。
優れた熱伝導性
セラミック基板の最大の強みは、熱を効率的に逃がす性質です。一般的なFR-4(ガラエポ)基板に比べて数十倍の熱伝導率を持ち、LEDやパワーデバイス周辺に発生する熱を素早く拡散できます。
これにより、部品の温度上昇を抑え、素子の寿命を延ばすことができます。
高い絶縁性と信頼性
セラミックは電気絶縁性にも優れており、高電圧を扱う回路でも安定して使用できます。
また、熱や振動など過酷な環境でも劣化しにくく、長期間の安定動作を実現します。自動車や産業機器、航空宇宙機器など信頼性が求められる分野に適しています。
セラミック基板のマシン実装で課題となる要素
セラミック基板は放熱性や信頼性に優れる一方で、FR-4や銅基板と比べるとマシン実装に特有の課題があります。セラミック基板の特性を理解していないと、部品のズレや割れ、未接合といった不具合につながりやすいため、注意が必要です。
レジストが使えないことによる影響
一般的な有機基板では、はんだレジストによってはんだの広がりを制御できます。
しかしセラミック基板では、レジストが密着しにくいなどの理由から塗布できないケースが多く、銅箔がむき出しになります。
その結果、リフロー時にはんだが流れ出し、部品がズレる・割れるといった不具合が発生しやすくなります。
はんだの濡れ性が悪い
熱伝導がよいため、半田が溶け難く未接続(未着)が発生しやすいです。
そのため、部品の傾きや浮き、未接合といった不良が発生するリスクが高くなります。
熱膨張係数(CTE)の差
リフロー工程では、基板と部品の膨張率の違いが問題になる場合があります。
セラミックは半導体に近いCTEを持つものの、他の部品のCTEと差があると、割れや剥がれを引き起こす可能性があります。脆い素子は、わずかな応力でも破損につながるため注意が必要です。
はんだ量の制御が難しい
レジストによる制御ができないため、印刷条件や開口設計に頼るしかありません。
はんだ量が多いと流れて部品が傾き、少ないと接合不足となり、歩留まり低下の原因になるため、適切なはんだ量を見極める必要があります。
基板の硬さと脆さ
セラミックは硬い素材ですが衝撃には弱く、ピックアンドプレースでの搭載時に割れるリスクがあります。
また、FR-4のようにシート状でまとめて実装することが難しく、個片(ピース)の対応が必要になる点も課題です。
このように、セラミック基板は「熱に強いが、マシン実装には不向きな要素が多い」という二面性を持っています。
課題を正しく把握し、対策を講じることが量産化の成否を分けるポイントになります。
マシン実装の課題への対策
セラミック基板のマシン実装には多くの課題がありますが、材料選定から実装条件の最適化、基板処理やハンドリングの工夫など、複数のアプローチを組み合わせることで安定したセラミック基板の実装が可能になります。
ここではマシン実装時の代表的な対策を5つ紹介します。
はんだ材料の工夫
セラミック基板の実装では、はんだの選定が歩留まりを大きく左右します。
- AuSn(⾦スズ)はんだ:高硬度で信頼性が高く、割れやすい部品の実装に有効。ただし高価で、リフロー時に必要な熱量も大きい。
- Sn-Ag-Cu(三元はんだ):コストバランスに優れ、量産性も確保しやすい。活性の高いフラックスを組み合わせることで濡れ性の不足を補える。
印刷条件の最適化
レジストで制御できない分、はんだ印刷工程での調整が重要になります。
- メタルマスク(ステンシル)の版厚や開口率を細かく調整し、均一なはんだ量を確保。
- スキージ圧や速度を最適化し、印刷の再現性を高める。
これにより、はんだの過不足による部品ズレや浮きを防止します。
リフロー温度プロファイルの調整
熱膨張係数の差や素子の脆さに対応するため、温度管理の最適化が欠かせません。
- 立ち上げ速度を緩やかにして熱衝撃による割れを防止。
- ピーク温度を抑えて部品や基板のダメージを回避。
- 冷却速度も調整し、応力集中を緩和。
表面処理による濡れ性改善
セラミック基板の濡れ性不足には、メタライズ処理やNi/Au表面処理が有効です。これにより、はんだが弾かれにくくなり、接合信頼性が向上します。
ハンドリング対策
セラミックは硬くてもろいため、実装工程での扱いにも工夫が必要です。
- ピックアップノズルの径や形状を見直し、搭載荷重を低減。
- 搬送速度を緩やかにし、衝撃による割れを防止。
- 個片の実装や専用治具を活用し、反りや応力を最小限に抑える。
このように、セラミック基板の実装は「材料選定」「印刷条件」「リフロー管理」「表面処理」「ハンドリング」という複数の要素を並行して改善することで安定化が可能となります。単一の対策だけでは不十分であり、トータルで最適化する姿勢が不可欠です。
代替案:金属基板(銅・アルミ)の活用
セラミック基板は高い放熱性や絶縁性を持ち、高発熱デバイスの基板に適した素材ですが、コストの高さや実装難易度といった課題を抱えています。
そこで量産やコストパフォーマンスを重視する場合には、金属基板を代替素材として用いることも有効です。
金属基板を選ぶメリット
- レジスト塗布が可能
セラミック基板では難しかったはんだ流れ止めやパターン保護が実現でき、実装時の不具合を抑えやすい。 - SMT量産に適している
従来の量産プロセスと親和性が高く、歩留まりの安定化や生産効率の向上につながる。 - コスト面で優位
セラミックに比べて材料費・加工費が低く、トータルコストを抑えやすい。
留意点
もちろん、金属基板にも注意点はあります。絶縁層の設計を工夫しなければ熱集中や絶縁破壊のリスクが残り、セラミック基板ほどの耐熱性・信頼性は得られません。
また、割れやすい部品を実装する際には、金属基板であっても温度プロファイルや搭載荷重の制御が欠かせません。
まとめ
セラミック基板は放熱性・絶縁性・信頼性の面で優れた性能を持ち、高発熱デバイスに用いる基板の材質として適しています。
しかし、レジスト非適用や濡れ性の問題、CTE差、脆さといった要素がマシン実装の課題となります。
これらは、はんだ材料の工夫、印刷条件やリフロープロファイルの最適化、表面処理やハンドリング改善といった複数の対策を組み合わせることで克服可能です。
一方で、量産性やコストを優先する場合には、金属基板(銅・アルミ)を代替として選択することで、実装安定性とコストメリットを得ることもできます。
「用途・信頼性要求・生産性」のバランスを取りながら、最適な基板材質を選定することが重要になります。
エーピーエヌ株式会社では、セラミック基板をはじめとした多様な材質の基板実装に対応しており、基板に求められるスペックや使用条件に応じて、量産時の生産性も含めた最適な基板の提案を行っています。
実装課題に直面した際も、豊富な経験と技術力で最適解を導き出すことが可能です。
基板の製造で何か課題をお持ちの際は、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。
